渋谷PARCOの『米とサーカス』で、オシャレな昆虫スイーツを!

渋谷PARCOの『米とサーカス』で、オシャレな昆虫スイーツを!

2019年11月、約3年をかけて新生した渋谷PARCO。リニューアルで目指したのは、“新しいこと、人と違うこと、面白いこと、個性を追求する”都市生活者に世界中から訪れてもらうこと、だそうです。

そして、昔から渋谷のファッション、アート、音楽などの文化をつくってきたパルコの旗艦店の地下1階に、なんとジビエと昆虫食のお店『米とサーカス』が進出したというのです!これはワクワクせざるを得ません。早速、編集部で取材にいってきました。

こちらがお店。オープンな入口を興味深そうにのぞいていく人も大勢

新生渋谷PARCOの不思議空間に昆虫食が登場!

地階フロア『カオスキッチン』は、しゃれたカフェや肉料理店、回転寿司、居酒屋、さらに朝まで営業のゲイバーなどが、どこかスチームパンクっぽい近未来感漂う地下路地にひしめく、まさにカオスな雰囲気。その奥に──ありました!昆虫や野生獣の絵がカラフルにペイントされた『米とサーカス』。
“最新流行”“好吃”“セポン”といった文字も描かれ、なんとも楽しそう。店内は少し狭いですが、ネオン風の照明がまた、思わず引き込まれるような妖しさを醸し出しています。

コオロギを可愛らしくデザインしたサインも、なんだか敷居を低くしてくれそう
カウンターにはタツノオトシゴやカメムシ、ナマコ、マムシ、オオヤモリなどを漬けたお酒

今回、渋谷PARCOに新店舗をかまえた『米とサーカス』は2011年、高田馬場にオープンしました。当サイトでもおなじみ『昆虫料理研究会』によるイベントも、しばしば開かれる場です。現在はグループ店舗8軒を運営しています。

「もともとは鹿肉のおいしさをもっと知ってもらいたくてスタートしたんです」とブランディングディレクターの宮下慧さん。猟師らを訪ねるうちにさまざまなジビエを知り、ついに行き着いたのが昆虫。
イベント的にお店で出すと意外に好評で、やがて各種の昆虫を通常メニューに盛り込むようになりました。

そこに声をかけたのが渋谷PARCO。昆虫食の盛り上がりが、きっと上層部にも響いたんですね。攻めてますね!渋谷PARCOが誕生したのは1970年代初頭です。
新しい価値観を次々と提示し、渋谷文化ともいえるものをつくった存在でした。そしてリニューアル後の今再び、渋谷から最先端の文化を発信しようという心意気を感じます。

表の液晶ディスプレイにはオススメの『MUSHIパフェ』『MUSHIだんご』が

渋谷PARCO店でしか食べられない昆虫メニュー

高田馬場店などでは、そのコンセプトを十分に承知し、相当に珍しいジビエや昆虫を楽しみに来るお客さんが大勢います。けれどこちらはファッション中心のビル。誰が、何を食べに来るのでしょうか?

メニューの表紙ももちろん昆虫のイラスト。デザインもPARCOらしくオシャレ

「お客さまは意外と老若男女幅広いです。興味を持ったお子さんが両親と一緒に来たり、昔食べていたご年配の方が懐かしがっていらしたり。若い世代も動画などを撮りながらワイワイと」と宮下さん。

『BUGバーガー』『MUSHIパフェ』『MUSHIスムージー』など、ほかの『米とサーカス』店舗にはない、ここだけのメニューはいくつもあります。
「流行スイーツ、狙ってますから!(笑)」

左が『MUSHIソーダ』、右が『MUSHIスムージー』。環境に配慮し、バガスというサトウキビの搾りかすを使ったストローを使用

それでは早速、いただいてみましょう!まず注文したのは飲み物。『MUSHIソーダ』と『MUSHIスムージー』です。どちらも見た目はキレイ。『MUSHIソーダ』はコオロギ粉末とショウガ、リンゴ酢などが入っています。ショウガの風味でサッパリ。トッピングのスズメバチもおいしくいただけます。

ソーダのレモンの上にはドライスズメバチ

『MUSHIスムージー』はホウレン草や豆乳、バナナ、ベリーなどの濃いスムージーが層に。下の緑の層にはホウレン草、バナナ、豆乳が、上の紫の層にはブルーベリー、甘酒、豆乳、そしてコオロギ粉末がたっぷり入っています。

スムージーには甘酸っぱいベリー類のまわりにドライコオロギ。層ごとの味の違いも楽しめ、コオロギ味も濃厚

次は『BUGバーガー』です。テーブルに運ばれた見た目はかなりおしゃれ。一見ふつうにかっこいいバーガープレートで、たっぷりのポテトフライも添えられています。しかしながらパティに肉は使っていません。重量の30%はコオロギ粉末。それをひよこ豆や米でつないで仕上げ、テリヤキソースをかけています。

宮下さんは「肉のような脂がないので、どうしてもちょっとパサついてコロッケバーガーみたいになるんですが…。今後も研究して、よりおいしくしていきます!」

食べてみるとスムージーほどのコオロギ感はありません。パティに混ぜ込んでいる玉ねぎや挟んであるトマトなどのおかげで、誰でも食べやすそう。確かにパティの食感におからっぽい粉感はありましたが、何かそれが懐かしさを感じさせるような…。これからの進化に期待です!

見た目もアメリカンスタイルな『BUGバーガー』。ボリュームも満点!

昆虫スイーツはインスタ映え感も抜群!?

さて、食後はスイーツにいきましょう。このお店のフラッグメニューともいえる『MUSHIパフェ』です。登場した姿はなんとも美しい!これはインスタ映え抜群です。香川名物の伝統菓子“おいり”などを楽しくトッピングした頂上には、羽を広げたタガメが鎮座しています。
白玉や米パフ、クロレラゼリー、ラズベリーのジュレ、ねっとりとした餡状の“米プリン”など、それだけでパフェとして成立する組み合わせの中、底のあたりにドライコオロギ、上にはミールワームがたっぷりと…。

“おいり”や“麩焼(ふのやき)”、稲穂で飾られた『MUSHIパフェ』。その横にのっているものは…?

「ドライコオロギもミールワームもサクサクしているのでコーンフレーク的位置づけです。塩漬けのタガメは甘みの中で塩昆布みたいな役割」と宮下さん。ともあれ、いかにも難関そうなタガメを小皿によけて食べてみましょう。なんら問題はない…というかおいしい!味の設計がとてもよくできているのがわかります。
コオロギやミールワームも、確かにいいアクセントになっています。

けれどタガメをなんとかしなければ。これはそのまま食べるものではありません。
パフェを頼むと小さな解剖バサミがついてきます。これでチョキチョキと腹を開き、しぼんでわずかになっている中身を掻き出して食べるのです。うう、初めての体験…。

大きなタガメが羽を広げて鎮座!タイで作られている塩漬けだそう
パフェには解剖バサミとともに、タガメの開き方と昆虫食の意義を説明したカードがつく

不思議なものですね。ハサミを手にすると何か自分の中のモードが変わる。意外に平静。お尻を切り、開きにして…とやっているうち、楽しくなっているかも?ほのかな柑橘香のある塩っぽい身の部分もおいしくいただきました。

写真説明に沿って開き、ほんの少しだけ入っている香りのよい身をスプーンでこそげて食べる

最後にもう一品。『MUSHIだんご』を。こちらは白玉団子3個を串に刺しちょっとクリームをのせた上に、イナゴの佃煮、ドライコオロギ、蜂の子の甘露煮をトッピングしたものが3本セットで登場します。これ、たぶん誰にとってもおいしいです。
虫はダメという人にもぜひおすすめしたい。特にイナゴと蜂の子!米で作られた団子と甘辛味に仕立てた昆虫の取り合わせはテッパンなのだと再認識しました。

和の風情漂う『MUSHIだんご』。海外の方や昆虫食初心者もおいしく食べられること間違いなし!

取材陣が滞在中、若い人たちも店に来ていました。料理が出た最初は「うわー」と声が上がるのですが、すぐに落ち着くのが印象的。興味で入ってはみたけど、意外においしいということが伝わっているようです。

新しい渋谷PARCOには、流行に敏感な方たちや各国の人々も訪れていくはず。昆虫食の新しい発信源として、おおいに期待したいです。こちら各種ジビエ料理も相当においしいので、昆虫食とあわせてぜひチャレンジしてください!

店内はテーブル席とカウンター。壁にはプラスチック廃棄物などを東京都の形に埋めたオブジェも

データ:
『米とサーカス 渋谷PARCO店』
東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO B1F
営業時間 ランチタイム11:00〜17:00 、ディナータイム17:00〜23:00
無休
WEBサイト

文 :秋川 ゆか
写真:BUGS GROOVE
編集:BUGS GROOVE