捕って料理して食べる!夏の大人気イベント“セミ会”へ

捕って料理して食べる!夏の大人気イベント“セミ会”へ

セミは本当においしい──昆虫食愛好者の誰もが言う言葉です。夏、みんなでセミを捕って食べるのは面白く、姿はともかく食感や味は“虫感”が強くないので初心者にもオススメだとか。昆虫料理研究家の内山昭一さんが理事長を務める『NPO法人昆虫食普及ネットワーク』開催の“セミ会”を、毎年、楽しみにしている人も多いといいます。

 

「これはぜひとも参加しなければ!」ということで、開催日に取材陣はBUGS GROOVEのレポーター・某大学探検部の西川さんとともに、集合場所の京王線・京王永山駅へと向かいました。

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樹木の幹についていたセミの抜け殻。周囲にはセミの鳴き声が響く。

虫捕り網持参でいざセミ捕りへ!

“セミ会in多摩”は、『NPO法人昆虫食普及ネットワーク』と、多摩市若者会議から生まれた任意団体『セミたま』の共催。自治体の後援のもと、毎年、地域の公園で開催しています。

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参加していた小学生の男子。虫捕りには慣れているそうで捕獲の手つきも鮮やか!

17時、駅前に集まった参加者は40人。開催の告知後、わずか1週間で定員いっぱいになったそうです。参加者は小学生も数人いますが、ほぼ大人。それが大勢で虫捕り網を片手に駅に佇む光景って…。通りすがりにちらちらと見る人たちが多いのもうなずけるかも。司会役のお笑い芸人・丸沢丸さんの説明ののち、駅近くの公園にGO!

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「あそこにいる!」 セミを見つけたら、慎重に網の入れ方を検討して……。

到着すると各自、捕獲するため散り散りになります。公園の中はセミ時雨。木の幹をよ〜く観察して、とまっているセミを見つけたら静かに近づき、エイヤッ! 昆虫に詳しい丸沢さんのアドバイスももらい、制限1時間で取材陣はニイニイゼミ6匹とミンミンゼミ3匹、羽化しかけのミンミンゼミ1匹の計10匹をゲットできました!

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昆虫ケース持参の西川さん。ミンミンゼミを捕獲して「捕れました~!」
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こちらは幹についていた羽化しかけのミンミンゼミ。かなりレアな収獲かも?
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みんなが捕ったセミ成虫は、まとめて洗濯ネットに。1人3~7匹は捕獲できたそう。

日が暮れた18時半からは懐中電灯で照らしながら幼虫の捕獲。土の中から出て樹木に向けて歩いていくのを見つけるのです。これはけっこう難しい。草むらをじっくり観察し続ける根気が必要なようです。一巡して捕獲できなかった取材陣は、調理班に合流すべく会場のカフェへと向かいました。

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草むらを歩く幼虫。同じ場所も何度も巡回して、土から出てくるのを見つける。

みんなで手分けしてセミの下ごしらえ

カフェでの調理は、『昆虫料理研究会』と『セミたま』メンバーが主導し、参加者みんなで手伝います。同時進行で実にいろいろな料理が作られていきます。

 

さて、本日捕獲したセミは…!? まずは水に入れていくのですが、そこでひとつやるべきことが。オスの腹にある鳴き声を出す膜に指の爪で切れ目を入れ、鳴けないようにするのです。これは、大量のセミが鳴くことで起こりそうなトラブルを避けるため。調理中はもちろん、運搬するときなどにも役立ちます。説明にすんなり理解した西川さんは「あ〜簡単ですね」と、どんどん作業を進めます。メスは膜がないのでそのままでOKです。

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洗濯ネットからセミを取り出し、腹の膜を切って手前の鍋へ。鳴き声が止まるだけで、セミは死なない。
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オスの腹のつけ根にある硬い膜を親指の爪でパキッ。オスは皮が硬いのでお腹を開くと味がしみやすい(ただし、形が崩れやすくなる点も)

いい匂いのするキッチンでは、下茹でした幼虫を燻製にしています。段ボール製の簡易燻製器で約20分燻せば完成。「これは本当にうまいよ〜。ナッツの味!」と、燻製の番をしていた60代男性。「セミ会参加は4回目。ただただおいしいから来ています」

 

そして、油を満たした鍋では、先ほどまでジージー鳴いていたセミが、次々と揚げられていきます。

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ガス火に乗せた簡易燻製器で調理した幼虫。実においしそうな匂いが漂う。
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成虫を天ぷらに。水に浸したことですっかり静かになり、揚げられるのを待つだけ?

タコス作りは用意されたトルティーヤに野菜やチーズ、ソースを順に重ね、コオロギやセミなど昆虫をトッピングしていくだけ。誰でも簡単にでき、がぜん“自分で昆虫料理を作っている”感が出てきます。

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参加者が交代しながらのタコス作り。レタスやきゅうりなど野菜もたっぷり!
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乾燥コオロギなどのほか、揚げたセミもトッピング。チーズとの相性もばっちり。

今回使用する昆虫食材はセミだけではありません。ジャイアントミールワームとコオロギをのせたカナッペ、いろんな昆虫をタコ代わりに入れたたこ焼き…。スズメバチの巣から幼虫を取り出す下準備も、手の空いている人がどんどん進めていきます。

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解凍したスズメバチの巣からハチの子を取り出す下準備。幼虫の場合はフンも抜く。
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ジャイアントミールワームとコオロギをのせたカナッペ。昆虫は乾燥しているのでサクサクとした食感。

セミ料理は本当においしかった!

さて。20時には調理も終了。丸沢さんと内山さんの楽しい掛け合いトークを聞き、さっそく実食です。テーブルに並んだのはメインのセミ料理として、幼虫の燻製、ミンミンゼミの天ぷら、ニイニイゼミの唐揚げ、タコスのほか、カナッペやたこ焼きなど。果たしてお味はどうでしょう?

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試食前に丸沢丸さんと内山さんのトークでは、昆虫食をめぐる深いお話も。

いやはや驚きました!噂に違わず、確かにこれはおいしいです。燻製を口にした西川さんは「茹でピーナツの味!」。まさにそう。むっちりとした肉質は食べ応え抜群。収穫したてのフレッシュなピーナツを茹でて、ちょっとだけ醤油をまぶした感じです。そして天ぷらと唐揚げは、サクサクと歯ざわりもよく、やはりどこかナッツのような感じです。「これはいくらでも食べられますね〜」(西川さん)

 

さらに取材陣は冷えた白ワインとともにいただいてみました(未成年の西川さんはソフトドリンク)。合うんですね、これが。やはり節足動物ゆえにエビ・カニに近いのでしょうか。

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これが幼虫の燻製。見た目は虫でも味は茹でピーナツという体験はかなり衝撃的!
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「全部おいしいです!」と西川さん。自分で作ったタコスのセミを取り出してパクッ。

わいわいと盛り上がる中、スタッフが作った別の料理も3つ出てきました。スズメバチの幼虫のオイル炒め。これがまたおいしい! 「適度に水分が飛んで、まさに高級食材ですね!」(西川さん)。幼虫の食感が苦手だった取材陣の一人も完全克服できました。

 

次は、セミ捕り中に捕獲されたショウリョウバッタのオイル炒め。エビと同様、加熱すると赤くなります。川エビをさらに上品にした感じの味わいに一同感嘆です。

 

そして最後にビックリだったのが、サクラケムシのフンを煮出して甘味をつけたデザートです。ほのかなピンク色の寒天に上質な桜餅の香り。材料はフン、なんだよね??? ここまで昆虫の姿にちょっと引いていた初心者たちも、このおいしさにはかなり納得した様子でした。フンは桜並木の下で拾えるとのこと。探してみたい!

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サクラケムシの糞で作った寒天デザート。上品な味と香りに、初めての人からも驚きの声が。

料理をいただきながら、何人かに感想を聞いてみました。初参加の女性2人連れは「ビジュアルがちょっとダメだったけれど、唐揚げや寒天はおいしく食べられました」。今日のために山梨県から来たという女性は、「昆虫食に興味を持っていろいろ試してきましたが、セミ会はみんなで作るのが楽しいうえにおいしくて。2度目の参加です」。昆虫食好きな父とともに参加し、成虫7匹を捕獲した小学生男子はさすがの感想。「セミは噛んですぐはカリッとしているんですが、中は肉っぽくてジューシー。脚もサクサクしてうまいですね」

 

子ども心に還ってのセミ捕りから、昆虫料理の数々までとことん堪能できたセミ会。セミのおいしさもよ〜く理解できました。来年の夏が今から楽しみです!

データ:

『セミたま』

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公式Facebook

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『昆虫料理研究会』

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文: 秋川 ゆか

編集: BUGS GROOVE