初心者でも安心!コオロギ味噌の食べ比べに参加
昆虫を食べる──その言葉だけで、姿かたちを思い浮かべて抵抗を感じる人は多いのではないでしょうか。そんな人にオススメなのが、虫の姿が見えない昆虫食です。
参加してみたのは、昆虫料理研究家・内山昭一さん率いる『昆虫料理研究会』主催の“昆虫食のひるべ”。東京・阿佐ヶ谷のカフェバー『よるのひるね』を会場に2006年からスタートしている昆虫食イベントです。5月26日、第120回になる今回のテーマは“昆虫味噌を食べ比べてみよう!”。初めての人でも食べやすいと聞き、わずかな不安を胸にお店へと足を運びました。
ドキドキしながら昆虫食イベントに初参加
小さな店内に集まったのは取材陣を除いて9人。うち7人がこのイベントに初参加で、昆虫を一度も食べたことがない人も3人います。
「テレビ番組で昆虫食を見て興味を持ちました」と話す若い女性は、都合が悪くなった友人の代わりにお兄さんを誘って参加。お兄さんのほうは「昆虫は嫌だと言ったのに……」と逃げ腰。
比較的年配の男性は「持病でタンパク質制限をしていて。昆虫は体によさそうだし、面白いと思いました」
東南アジアで虫を食べた経験を持つ人もいました。「揚げた虫を買ってみましたが、苦手。おいしく食べられるものはないか探りたくて参加しました」
3種類の昆虫味噌が用意されていた!
さて、まずは今回の昆虫食を用意してくれた、『昆虫料理研究会』の清田さんと佐々木さんからの説明。
「フタホシコオロギ、ヨーロッパイエコオロギ、バッタの3種類の昆虫味噌を食べ比べて、味の違いを知ってもらいます。昆虫のかたちはわからないので、今日は初心者にもいいと思いますよ。比較用に、ふつうの味噌も用意しました」
そもそも昆虫味噌とは? 昆虫を漬け込んだ味噌かと思いきや、まったく違いました。ふつうの味噌は茹でた大豆と米麹、塩でつくります。桝塚味噌(豊田市)の協力を受け、材料の大豆の10%を昆虫粉末に置き換えて仕込んだのが昆虫味噌。つまり大豆の植物性タンパク質の一部を昆虫の動物性タンパク質に替えたということ。粉末なので姿は見えないし、発酵によって昆虫独特のエグ味も分解されるそうです。ふうっ。それならちょっと安心か。
いよいよ試食!クイズ形式で材料を当てる
試食は、A・B・Cとだけ書かれた味噌がどの昆虫か当てるクイズから始まりました。
ヒントは、①コオロギは雑食性で草も肉も食べる ②フタホシコオロギは体が大きくて食欲も旺盛なので、うま味が溜まっている ③ヨーロッパイエコオロギは体が小さいぶん、味もあっさりめ ④バッタは草食なので草のような味がする
見ると色もそれぞれ微妙に違います。最初は耳かき程度におずおずとなめてみると……。ええーっ!? これは驚き! 意外な味わい深さなのです。どれも工夫を凝らしたなめ味噌のようで、野菜はもちろん、温かいご飯にも合うこと間違いなし。大豆だけのふつうの味噌が物足りなく感じるほど。参加者からも口々に、あれっ、おいしいな……というつぶやきが。
比べていくと、Aはわずかに海藻のような風味がし、甘みもあってキュウリとよく合います。Bはうま味や甘みは強いけれどサッと消える感じ。Cはさっぱりしていながら、飲み込んだ後も口にうま味がじんわりと残ります。どれも個性的な美味で箸が止まらない……。
クイズの答えはAバッタ、Bヨーロッパイエコオロギ、Cフタホシコオロギ。違いをじっくり味わった結果、なんと全問正解できちゃいました!
味噌汁、焼きおにぎり、そしてデザートも!
続いて、フタホシコオロギ味噌の味噌汁、ヨーロッパイエコオロギ味噌を塗った焼きおにぎり、団子にコオロギ味噌あんと乾燥コオロギを載せたデザートを試食して、名残り惜しくも終了。
参加者はみんな、「虫がおいしいという人の気持ちが理解できました」「珍味としておいしく食べられました」「イエコオロギ味噌はバランスがよくてクセになりそう。売っていたら買いたいです」と満足そう。逃げ腰だったお兄さんも「味噌になっていれば大丈夫ですね!」
初心者にも食べやすいだけでなく、ほかにはないすぐれたうま味、風味を持っていること。昆虫の種類によって味わいも違うこと。しっかり舌で理解できた体験でした。もしも昆虫味噌をお店で販売していたら……? 冷蔵庫に常備しそうです!
データ:
『昆虫料理研究会』
昆虫食イベントを月1回、開催。昆虫の姿が見えない料理や食べ比べなど、「どうやったら昆虫をおいしく食べられるか」をメインテーマに、昆虫食の楽しさを伝えている。2,500円+1ドリンク500円(予約制)。
『よるのひるね〜夜の午睡〜』
03-6765-6997
JR阿佐ヶ谷駅北口より徒歩1分
2002年、東京・阿佐ヶ谷にカフェ・バー『よるのひるね』を開店。“よるひるプロ”として出版にも携わり、ワークショップやライブなど各種イベントも行う。1998年に取引先の内山昭一さんに誘われ、昆虫食関連シンポジウムに参加したことから、昆虫食に開眼。2006年から毎月、『昆虫料理研究会』によるイベントを開催している。
文: 秋川 ゆか
編集: BUGS GROOVE