第二のキャビアに!?サクラケムシ・プロジェクトへの道

第二のキャビアに!?サクラケムシ・プロジェクトへの道 vol.2

桜の葉を食べるサクラケムシを有効活用すべく企画を立ち上げた、第一園芸株式会社 OASEEDS(オアシーズ)事業本部の有志たち。

サクラケムシとは、モンクロシャチホコという蛾の幼虫。発生時期は7~9月で、桜をはじめ梨や梅、桃などのバラ科の植物を好みます。桜の葉を食べると桜餅のような味と香りになることから、桜の木につくものを“サクラケムシ”と呼んでいるのです。

2019年8月下旬、サクラケムシの発生を待ち、無事に捕獲に成功。9月某日、第一園芸の吉開千代さん、初山幸子さんと小学生の娘さん、実際にサクラケムシを捕獲した庭師の高木誠さんが集まり、昆虫料理研究家で『昆虫料理研究会』の主宰者でもある内山昭一さんを招き、BUGS GROOVE編集部のあるオフィスにて、サクラケムシを使った料理の試作&試食会が開かれました。

生きたサクラケムシが登場!

「桜にサクラケムシがついても、木自体は枯れたりしません。野山ではサクラケムシは普通に生息していて殺されることはないのですが、私たちは庭園の管理上、駆除しなければなりません。であれば“きちんと命をいただこう”というのが、企画を立ち上げたそもそもの発想です」と吉開さん。

8月下旬に捕獲したサクラケムシは吉開さんが飼育管理。桜の葉をやりながら世話をし、約20匹を持ち込みました。「だんだん可愛くなってくるんですよ(笑)。手で持つのも平気。毒はありませんし、痛くもかゆくもなりません」

葉を与えないと蛹(さなぎ)になってしまうため、絶食はさせず、フン抜きもしなかった

「今日は、試作はもちろんですが、ベストな加工方法を知りたい。下ごしらえがきちんとできれば、いろいろなアレンジができると思います!」と意気込むOASEEDSのメンバー。内山さんにアドバイスをもらいながら、調理スタートです。

うねうねするサクラケムシの状態を見た内山さんは、「肌ざわりがいいですね。弾力もいい。昆虫は鮮度が大切ですから」。おいしさを一番引き出せるのは“蒸す”なのだそうですが、手軽にできるのは“茹でる”。香りが飛ばないよう、茹で時間を短くするのがポイントです。

また、サクラケムシのフンの中にもクマリンという桜の葉に代表される植物の芳香成分が入っているため、フン抜きはあまりしないほうがよいとのこと。ちなみに、フンを集めてお湯を注ぐと、まるで桜茶のよう!淡いピンク色で、桜の香りのするおいしいお茶として楽しめます。

茹で始めると、肉を茹でているような香りがしてくる。煮汁もピンク色に

茹で上がったサクラケムシの頭を切り落とすと、断面から成長段階の違いがわかります。蛹(さなぎ)になる直前のものは身が詰まっていてベストな状態。一方、未消化の葉っぱである緑の汁が出てくるものは、肉が完全には出来上がっておらず身の詰まりが悪い。味に作用するため、飼育の際には調理するタイミングを見極めることも重要なポイントになってきます。

ベストな状態の身が詰まったサクラケムシ。中身がほんのりと赤い

サクラケムシを調理して試食!

下処理が終わったサクラケムシをさっそく調理。試作したメニューはこちら。

① サクラケムシご飯
② サクラケムシのチョコレートがけ
③ サクラケムシ入り卵焼き

サクラケムシご飯は刻んだサクラケムシに軽く塩をふってご飯に混ぜます。チョコレートがけはサクラケムシの風味を活かすために甘さ控えめのビターチョコを使用。卵焼きもご飯と同様に刻んだサクラケムシを使用し、溶き卵に加えます。

トッピングも工夫し、3品が出来上がりました。

サクラケムシご飯|刻んだサクラケムシをご飯に混ぜる。味付けは塩のみ
サクラケムシのチョコレートがけ|刻まずに揚げてからチョコレートをかけた。恐る恐る口にした初山さんの娘さんも「おいしい!」
サクラケムシ入り卵焼き|刻んだサクラケムシを加え、ほんのり桜が香る上品な卵焼きに
卵焼きにはサクラケムシをトッピング。イメージは卵からの誕生!

さて、味はどうかというと…。「ご飯、おいしい!ほのかに桜が香る感じがいい!」「チョコ、めっちゃおいしい!」「卵焼きもおいしいよね。でも、これは粉末にしてから加えてもいいかも」。ちなみに、初山さんの娘さんはチョコレートがけがとても気に入ったよう。終始、気持ち悪いと言っていた庭師の高木さんも「まずくはない」。

第一園芸のみなさんと内山さん。笑顔あふれる楽しい試作&試食会でした!

大いに盛り上がった料理の試作&試食会も無事終了。「下処理の仕方もバッチリ覚えました。成長段階によって食べ頃があることもわかりました。大量発生するときに下処理してうまく冷凍保存できれば、一年中楽しめるはず。粉末化も進めていきたいですね」と吉開さん。

いろんな可能性が広がっていくサクラケムシ。次のシーズンも楽しみにしています!

データ:
第一園芸株式会社
Webサイト

文 :久保田 裕子
動画:BUGS GROOVE
編集:BUGS GROOVE