新感覚のイベントで昆虫料理が魅せる新しい世界を体験!

新感覚のイベントで昆虫料理が魅せる新しい世界を体験!

東京都渋谷区にある『100BANCH(ヒャクバンチ)』は“100年先の世界を豊かにするための実験区”。創造のDNAを次世代につなげるため、パナソニックらが若者の熱い思いを支援するスペースとして2017年に誕生しました。この100BANCHで行われた夏の文化祭 “ナナナナ祭2019”の中で、7月7日、昆虫食イベント『WHAT’S NEXT? ─新食視点─』が開催されました。

 

コオロギラーメンで知られる篠原祐太さん代表のレストラン『ANTCICADA(アントシカダ)』と、高橋祐亮さん代表の昆虫食メディア『bugology(バゴロジー)』がコラボし、“100年先の未来に向けた食”を提案。昆虫料理だけでなく、デザイナーがプレートやコップといったプロダクトを制作するなど、視覚的にも楽しめる新しい食体験が提供されました。

 

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コオロギラーメンをはじめ、昆虫食に対してさまざまなチャレンジを続ける篠原祐太さん。
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アートやデザインといった面からもアプローチする、昆虫食メディア『bugology』代表の高橋祐亮さん。

アートやデザインといった面からもアプローチする、昆虫食メディア“bugology”代表の高橋祐亮さん。

 

取材陣として参加したのは某大学探検部の西川さん。西川さんは探検部の活動で昆虫食にハマり、この秋、BUGS GROOVEの企画として『1ヶ月間昆虫食生活』にチャレンジします。 

 

「自分もこれから昆虫食を発信する側になるので、伝え方を勉強したくてこのイベントに参加しました。いろいろな調理方法も知りたいです。そして、探検部でも評判を聞いていたコオロギラーメンを実際に食べられるので楽しみです!」

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取材陣の一人としてイベント参加の西川さん

オリジナルの器が楽しさを演出

コオロギラーメンを中心にテーブルに並んだのは、木製の小皿に美しく盛りつけられた4品。小皿をデザインした風祭あゆみさんは、「昆虫のサイズや種類の多さを考え、これからも料理が増えていくという可能性を考えました」。品数が増えれば小皿はどんどん連結できるしくみでで、昆虫料理の楽しさを演出してくれます。

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多角形の小皿はさまざまな並べ方で連結できる。

そして、緩やかな曲線を描く木製の容器には、樹液をモチーフにした2種類の特製ドリンク。制作者の高本夏実さんは、「セミが樹液を吸う様子をイメージしました。セミの気持ちになって飲んでほしい」と話します。ストローを挿す飲み口がいくつかありますが、ドリンクが入っている飲み口は2口。「飲んでみるまで何が入っているかわからないのでワクワクしますね。子どもも楽しめそう!」とストローを挿す西川さん。

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木の幹から樹液を吸うセミの気持ちを追体験する。
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食卓を楽しく演出する、デザイナーの高本夏実さん(左)と風祭あゆみさん(右)

ドリンクももちろん昆虫で仕込んだもの。「ノンアルコールのタガメマティーニは、ラ・フランスみたいな爽やかな味ですね。香りがすごくいい!」と西川さん。この甘い香りは、オスがメスを誘うときに出すフェロモン。タガメがこんなにおしゃれな飲み物になるとは!

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『ANTCICADA』と岐阜県の辰巳蒸留所が共同で開発したタガメのジン。

コオロギラーメンと美しい創作料理

すでに知名度も高いコオロギラーメンですが、篠原さんはその都度コオロギの種類や産地、配合などを変えていくという、まさに“進化するラーメン”です。

 

今回は、コオロギ100%のスープで、しかも徳島産と福島産でとった2種類の出汁をブレンド。コオロギの麹を造り発酵させたコオロギ醤油、コオロギ粉末を2%練り込んだ麺、コオロギ100%の油と、よりコオロギ度が強い仕上がりです。

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コオロギラーメンのスープはコクがあるがキレもよく、うま味の余韻が続く。

西川さんは、「鶏ガラや煮干し系などいろいろあるラーメンと比べても断トツにおいしい! 麺は少し香ばしく、スープはエビよりもマイルドだけど、スルメイカのようなうま味がガツンときて。ほかのラーメンが物足りなくなるくらい」と、スープまで全部飲み干していました。

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念願のコオロギラーメンを堪能する西川さん。「ほかのラーメンには例えられないですね。これはもうコオロギの味!」

「いろいろな虫を使いますが、その虫が一番輝けるように料理した」と篠原さん。“卵かけご飯”は、ご飯にフタホシコオロギの醤油に漬け込んだ卵黄がのり、さらにトビウオの卵やハーブなどを散らしています。ちなみにコオロギ醤油を造るのには3ヶ月かかるとか。

 

「コオロギ醤油のうま味が黄身に閉じ込められて、とてもおいしい!今まで味わったことのない深い出汁のような味。思わずお皿をなめたくなりました」

 

ハチの子やツムギアリを使った“生春巻き”は「プリッとしたハチの子の食感が楽しい。ツムギアリの酸味がアクセントになっています」

 

“セミ餃子”はセミのナッツのような味が豚肉と相性がよく、食べ応えもある一品。「食べたことがないので正直、セミの味はわかりませんでしたが、料理としてとてもクオリティが高いと思います。これなら初心者でもおいしく食べられます」

 

“わらび餅”は「爽やかな香りで、上質な黒蜜の味がすると思ったら、カイコのフンのお茶、わらび餅の粉、砂糖だけで作っていると聞いてびっくり!カイコのフンが桑の葉茶のような香りなんですね」

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左から、ハチの子とツムギアリの生春巻き、セミ餃子、コオロギ醤油に漬け込んだ卵かけご飯、カイコフン入りわらび餅。

イベントに参加して感じたこと

「昆虫食というと料理のことしか頭にありませんでしたが、今回は器にもこだわっていて、料理がおいしいのはもちろん、目で見てとても楽しかったです。本当に創作料理のおしゃれなレストランに行っているような気分になりました」と西川さん。これまで見た目にもインパクトがある料理を食べてきたのもあって、今回のイベントはとても新鮮だったようです。

 

そして、これから発信する側として今の自分にできる昆虫食を改めて考えたそう。「まだまだ勉強量や知識は足りないけれど、日常において『自分でもこれなら作れるかな』と試せるような昆虫食を発信してみたいと思います」

 

新しい昆虫料理の時代へ

今回楽しんだ新しい感覚の昆虫料理は、篠原さんが2020年春にオープン予定の、地球を味わうレストラン『ANTCICADA』で楽しめるようになります。「目指しているのは“地球が好きになるようなレストラン”。生きるのが楽しくなるような食体験を提供したい。昆虫に限らず、まだスポットライトを浴びていない食材を取り上げていきます」と篠原さん。

 

さらに「昆虫はあくまで食材のひとつ。おいしく料理すればおいしい。だからこそ、未来の食材としてそのポテンシャルを引き出し、日本や世界に広めていきたい」と語ってくれました。

 

料理を取り囲むプロダクトも含めて新しい食空間、そして食体験を提案した今回のイベント。“昆虫食”がますます広がっていく可能性を感じることができました。

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これからの昆虫食を牽引していく開催者のみなさん。
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『100BANCH』では昆虫食だけでなく、さまざまなプロジェクトのイベントを定期的に開催。

文: 久保田 裕子

編集: BUGS GROOVE